少女庭国を読む

2019年10月20日

本と漫画

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わたくしごとではございますが、腰を痛めてしまいまして。あいててて。仕方ないので「比較的自由な姿勢でできることはなんだろう」と考えて、本読むかと。

というわけで、『少女庭国』(読み:しょうじょていこく、矢部嵩、ハヤカワ文庫)を読みます。オリジナル刊行は2014年、今回読む文庫版は2019年。

本記事ではちょっとずつ感想を書いていくつもりです。読んだ人でないと何のことだか分からない記述が多くなると思います。それと、どうもネタバレに弱い性質の本らしいので、それが嫌な方は回れ右しましょう。ここではあまり興ざめなことを書かないように気をつけますが、必要を感じたら「この先ネタバレ注意」などと警告を入れます。

【この記事は2019年10月20日〜28日にかけて更新していました】

6人の話し合い(31ページ)まで

最初に全体のページ数を見て、そして目次を見た。すると、かなり奇妙であることに気づいてしまった。もしかしたら、この目次は見ない方がよかったかも。

貼り紙の内容。ぱっと見デスゲームっぽいのだが、ここから導かれる素直な結論は「1人以外みんな死ぬ」であって、いかにもおかしい感じ。実際、最初の6人もその結論になんとなく達しているようだ。何が起こるんだろう。

レビューで「読みにくい」という評判をチラチラと見てはいたが、今のところそれほどではない。確かに独特なところはある。セリフに句点がないとか。でもこれも何か伏線かもなあ。

以下、とりとめなく。

  • 「式乃至学校」という文字列(11ページ)の意味が分からず、アプリで調べてしまった
  • 「え、いってる意味そんな判んない?」のセリフ(22ページ)、なんか活き活きしてて好き
  • めっちゃ「阿漕」言うやん
(10月20日 記)


最初の区切り(66ページ)まで

12人の他愛のないやりとりが続く。でもこのあたりの描写はとてもいい。6人の話し合いのあたりはリアル感があったが、こちらはちょっと舞台のように掛け合いが続く感じ。52ページのあたり、タイトルの「庭国」やオビの「建国」とはこういう意味だったのだろうか。

そして……




【そろそろネタバレ要素が強くなっていきます。閲覧にお気をつけください】























犬子の死。ちょっと唐突にも思えた。そしていよいよ誰が死ぬか、誰が生きるかという話に。

「殺し合い」でこそないがしっかり殺人の描写がされ、本編(?)が終わった。これで終わり? 目次を見てしまっていたからうすうす分かっていたことではあるが。ここからどうなるのだろう? 個人的には、時計のズレの件が一番気になっている。

(10月21日 記


この本の性質(買う前の参考になるかも)

ちょっと順番を変えて。本項は読了した後、10月27日に書いています。

『少女庭国』を買うかどうか迷っている方の参考になるかと思い、この本の性質というか読む前の注意事項のようなものを列挙します。この記述もネタバレになるわけですが、もうネタバレゾーンに入ってるから大丈夫でしょう。

  • グロい表現があります。ただ、その表現は必要最低限に抑えられているように思えます。
  • 閉鎖感があり、不条理感があり、救いはなく、やや不快です。後半に進むとかなり不快な人もいるかも知れません。
  • オビの文言について。「百合」を性愛のことに限ると考えるならば、百合度はごく薄いと思います。「SF」度は、少量ぐらいかな?
  • 謎は最後までおおむね解明されません。例えば映画『CUBE』のようなカタルシスはありません。
次に、どんな人にこの本をおすすめできるか。
  • 不条理好きな人
  • 怪作を求めている人
  • 深読みしたい人
  • 観察したい人
といったところだと思います。

(10月27日 記)

120ページまで

補遺の始まり。なんだこれは。いろいろな「ケース」が出てきた。ゲーム理論で全通りの展開を列挙しているかのような。

79ページ、19番加藤梃子は妙に長い。内容に沿っているのだろうか。さらに進んでいくと、歴史の教科書のような見出しや太字単語が出てきた。内容的にも、文明の興り、人類の進化のようなことが起きてきている。うーんなんだこれ。この先どうなるんだ。気になる気になる。

「食料はどうしている?」「延々と進んでいったらどうなる?」「本当に逆方向の扉は開かない?」といった各種疑問にはどんどん答えが出てきている。ただ、最後に1人残った人がどうなるのか、あまり記述されていない。

(10月22日 記)


180ページまで

相変わらず人類が進化していく。しかし奴隷制度とはすごい話だなあ。そして改行なしゾーンからの「50番というのも(略)ただあったら読みやすいかなと思って付けた読書の目安であり」という文。誰に言っているのだ。読者か。ますますメタ的になってきた。

172ページ、57番谷村路子ではついにこの少女模様が教科書に載っている。本当に歴史の一部になってしまった。このあたりはどうも妙に読みづらい。

(10月23日 記)


220ページまで

日を分けてゆっくり読んでいるからかも知れないが、混乱がある。壁の中の話なのか「現世」の話なのかがときどき分からなくなるのだ。でも相変わらず人肉食ってるようなので安心(?)

219ページ、掘り出されてすぐに教育され、選別されるという話が妙に印象に残った。

(10月24日 記)


読了

59番(232ページ〜)では全体を俯瞰し、また合理性と文化度を高めた殺し合いの具体が語られている。60番ではバベルの塔を作るかというような研究。「人類の歴史をなぞる」という方向も極まった。

そしていよいよ読み終わった。不明点が大して解明されなかったのはちょっと意外だった。そういえばこれ、「補遺」だったな。しかし、結びにこのケースを持ってきたのは好き。


以下、少し考えたこと。

これは何だったのか

補遺全体の構造が、無限に少女が供給されるこの空間を表しているような気がする。メタ的な記述がいくつかあったはずだから、再度確認してみたい。

名前の意図

少女の名前に込められた意味は? という疑問があったけど、テキトーに付けられていること自体に意味があるのかも知れない。「使い捨て」「ただの思考実験上の登場人物」であることを強調しているのではないか。

1番のコピペはなぜ?

長文のケースの後に、よく1番のコピペ(例えば22番)が挟まっているのが恒例になっていて、この意図は分かるような分からないような。無数にある中の平凡な1ケースだよ、という強調? 単に調子を整えてる?

(10月25日 記)


ぼやっと再読

通しではないが、何となくもう一度読んでいる。セリフに中学生がSNSで使いそうな言い回し、あるいは略語が出てくるのが良い。この無機質な設定の中に活き活きした感じがあるのがなんとも良い。

もしかしたら脱出後の様子はどこかに書いてあったかなとチェックもしているが、おそらくないね。つまり、課題を解決した後については観察対象外、観測者の興味の外ってことなのね。徹底しているなあ……

(10月26日 記)


●10月27日は、10月21日の記述と10月22日の記述の間に書き足しました。


まだ読む

まだつまみ食いスタイルでちょくちょく読んでいる。以下、思ったこと。
  • 第一部(本編)、ふつうの閉鎖空間ものとしてとても楽しい
  • 試験の動機、観察者の存在、課題解決後に起こることなどが全然記述されておらず、徹底されているなあと
  • 58〜62番がやはりまとめ感あって、もう一度読んでみると結構クライマックスっぽさを感じる。
  • 59番の殺し合いのところ、プレイヤーの女子たちの表情とか感情とかが全く表現されていないところにちょっとグッとくる。
ダラダラしてきたのでこの記事は今日で締めよう。

(10月28日 記)

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